クローブ犬は考える

The style is myself.

Day 5: 旅の終わり

2015年8月23日(日)〜24日(月)

昨日のカレーキャラバンは、大盛況だった。いつものように、あっという間に終わってしまった。きょうは、学生たちがつくったポスターを展示して、成果報告会をおこなう日だった。ポスターづくりのプロジェクトは、厳密には「カレーキャラバン」ではないが、土佐山田での活動のようすはビデオを見てほしい。

【土佐山田キャンプ|2015年8月21日(金)〜23日(日)】撮影・編集:秋庭大志郎・井上涼・檜山永梨香

 

成果報告会は、少し遅れてはじまったが、無事にみんなの発表が終わって、13:00ごろには解散になった。ぼくたちは、バリューでお昼ごはんを買って、イートインコーナーで食べた。一昨日の夕方に土佐山田に来たばかりだが、それ以来、ほとんどの時間をバリューで過ごした。何度も売り場を行き来していたこともあって、イートインコーナーは、すでに憩いの場所になっていた。

 もともとは、今晩のうちに徳島まで移動し、明朝のフェリーで東京に帰る計画だった(じつは、去年も帰りのフェリーを予約していた)。だが、フェリーに乗ると、けっきょく船上でもう一泊することになって、東京に着くのは25日の朝になる。木村さんたちと話しているうちに、ちょっとでも早く戻ろうということになった。ぼくも、「関西ロード2」に出かける前に終えることのできなかった原稿をかかえていたので、早く帰るという案には賛成だった。高松でも土佐山田でも、一日の終わりに、こういうふうに日誌を書いて、少しだけ原稿に向き合っていたが、やはり、あまりはかどらない…。

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というわけで、14:00ごろに土佐山田を出発して、一路、東京に向かった。ナビに目的地(スタート地点の渋谷)を入力すると、到着予定は2:00。ずいぶん長いドライブだ。途中、運転を交代しつつ、休憩を入れつつ、東京に向かった。『つながるカレー』にも書いたが、帰りのクルマは楽しい。カレーづくり余韻に浸りながら、あれこれと話をするので、充実したふり返りの時間になる。「あの人がこう言っていた」「あんな人がいた」「あれがよかった(悪かった)」と、現場ではドタバタしていて、ゆっくり話せなかったことを、高速を走りながら共有する。そして、さっそく、つぎの旅について想像しはじめるのだ。

もうひとつ先のサービスエリアでいいかな、と思って給油を先延ばしにしていたら、途中でガソリンのメーターが「E」のほうに振り切れて、しばらくして警告音が鳴ってランプが点いた。あわててクルマのマニュアルを見たら、ランプが点いてから(運転のコンディションによるけど)だいたい50kmは走行できると書いてある。まぁだいじょうぶだろうと思いながら、なんとかサービスエリアにたどり着いて給油。警告音とランプのおかげで、眠気がさめた。「早めに給油」は大事。

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少しだけ途中で渋滞したものの、おおむね順調にすすんで、東京に戻ったのは、2:30ごろだった。けっきょく、土佐山田のまちを歩くこともなく(たとえば、オススメされた「日曜市」にも行かず、ROYAL NIBOSHI COFFEE STANDにも行けず)、東京に帰ってきた。カレー(とポスター)だけの旅だ。せっかくなのにもったいない、と思うのだが、じつは昨日の過ごし方も格別だった。

ぼくたちはテントにいて、カレーの準備が整うと行列ができた。「甘いのと辛いのとありますけど…」と、ひとり一人に声をかけて、ちょっとだけことばを交わす。わずかなやりとりだが、カレーを配っている間に、100人以上の土佐山田の人びとの顔を見ながら、ことばを交わした。これは、ガイドブックを片手にまちを歩くような旅では、絶対にありえないことだ。ちょっとした時間で、地元の人100人と出会う。これは、素晴らしい。嬉しい。

カレーキャラバンは、ぼくたちが発見した、あたらしい旅のしかたなのだと思う。

Day 4: バリうまバリューカレー

2015年8月22日(土)

そして、きょうは「夢の温泉」で目覚めた。窓の外は、青空。暑くなりそう。まずは、今回の「仕掛け人」である真奈さんの家で朝食をごちそうになる。

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43回目(番外編を除く)のカレーづくり。このペースだと、年内に50回記念を祝うことができるはずだ。11:00ごろ「バリューかがみの」に行くと、すでにテントが3張。ぼくたちのテントの場所(と思われる区画)も準備されている…。なんか、レジの前に貼られているチラシも、新聞の事前告知の記事も、いままでにないパターンなので、ちょっと緊張しつつ、さっそくクルマから荷物を降ろして設営を開始。きょうは、「雪ヶ峰牧場ラッシー」(バリューかがみの)と「アイスコーヒー」(ROYAL NIBOSHI COFFEE STAND)とともに、カレーを配るという、(ぼくたちの基準では)かなり大がかりな企画になっていた!

なにより、「バリュー かがみの」の強力なサポートに感謝したい。まず、食材については、たくさんの野菜を提供していただいた(くわしくは、カレーキャラバンのオフィシャルサイトに載るはず)。カレーを90食分つくるということだったので、ごはんの準備もお願いした。そして、店長のさりげないテキパキとしたサポートのおかげで、すべてが順調にすすんだ(ありがとうございました)。たとえば、ゴミをまとめたり、提灯ライトの電源コードを延ばしたり、必要だけどちょっと面倒な諸々のことを、ごく自然な動きで整えてくれるというマジック!(長机にかけたギンガムチェックのテーブルクロスも、店長のマジック!)

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【デザイン:坂東真奈】

 

スーパーの目の前にテントがあるので、買い物にはとても便利だった。肉やヨーグルトなど、必要なものを揃えて、さっそく調理を開始。きょうは、暑かった。太陽の動きとともに、テントのなかに陽が入り、汗だくになった。ときどき、スーパーに入って涼みながら、カレーをつくった。野菜・果物の差し入れがあったり、(チラシに書かれていたとおり)アドバイスや「口出し」があったり。何時間も煮込んでいたので、豚肉はとろけてしまった。

少し日が傾くと、ラッシー、コーヒー、ソフトクリームのほうに人が集まりはじめ、ほぼ予定どおりの時刻に、ぼくたちのカレーが完成した。お世話になりっぱなしだったので、最大級のリスペクトを込めて、名前は「バリうまバリューカレー」になった。価値あるカレーなのだ。

つけあわせには、提供していただいたキュウリでつくったサラダ(ヨーグルト+塩で味付け)、そして、お好みで差し入れのゆずを摺ってふりかけて食べることにした。ハラペーニョ(これも差し入れ)入りの「辛口」と、ふつうの「甘口」。2つの寸胴がいっぱいになった。

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そして、行列。きょうは、かなり忙しかった(配っているようすは、定点カメラの映像で、2”30あたりから)。クルマ5台分くらいのスペースが、ちいさなお祭りのような場所に変わり、カレーキャラバンのテントから、3つのテントをぐるりと囲む感じで列ができた。当初は90食という告知だったが、寸胴2つ分つくったので、120食くらいになったと思う。完食!

きょうも、一日たくさん汗をかいて、たくさんの人に会った。カウンターごしの、ちょっとしたやりとりが、ひとつ一つ身体にしみ込んでいくような、あの感じが好きだ。がやがやとスーパーの駐車場でカレーを食べている光景を見ながら、撤収と明日のポスター展、長距離ドライブ、さらにその先に待っているさまざまな「現実」のことが頭をよぎったが、なるべく考えないようにしていた。

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【おまけ:定点カメラで見るカレーキャラバン(土佐山田編)】

  【おまけ2:定点カメラで見るカレーキャラバン(土佐山田編)なべカム】

Day 3: 土佐山田へ

2015年8月21日(金)

移動日。「Kinco」で目覚める。(あたりまえだけど)「縁側の客室」とはちがった寝心地だった。かわいいバンクベッドは、キャンピングカーのような、「さるびあ丸」の特2等(わかる人にはわかる)のような雰囲気。シャワーの湯圧はすばらしい。1階でコーヒーを飲みながら、メールをチェック。世の中はお盆休み明けなので、さまざまな「業務連絡」がメールボックスに届いている。ぼくたちは、時期をずらして、旅の途中だ。

朝ごはんは、歩いて5分ほどのところにある「手打十段 うどんバカ一代」(セルフ)へ。ぼくと木村さんは、すぐに『空手バカ一代』を連想し、ウィリー・ウィリアムスの話で盛り上がっていたが、亜維子さんとやぼらってぃ(うどん屋で合流)は、何のことだか、まったくわからないようすだった。前の日に、岡さんに勧められた「釜バター」を注文。釜揚げ+バター+たまご+黒こしょう(+醬油)で、つまり、カルボナーラのような。美味。

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「Kinco」に戻って、代表の小林さん、(逗留中の)旅するバリスタの富澤さんと、あれこれ話をする。やはり、いろいろな人と(ちょっとだけでも)ふれ合うのが楽しい。だから、旅が続くのだ。

11:30ごろに仏生山温泉に行って、しばらく、まったり過ごす(自由時間)。リーダーは、相変わらず欲望に素直に従いながら、かき氷とカレーを食べ、木村さんは足首のテーピングについて語っている。14:00ごろ、岡さんに「じゃあ、また来年」と挨拶をして土佐山田(高知県香美市)へ向かう。距離としては120キロほど。長いトンネルをいくつも抜けながら南へ。ぼくたちは、ちょうど太陽のほうに向かっていて、フロントガラスからまっすぐに陽を受けながらのドライブだった。

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とくに渋滞もなく、16:00過ぎには土佐山田に着いた。なんと、今回はフライヤーが配られたり(バリュー かがみの店のレジのところにフライヤーが貼られていた)、『高知新聞』に記事が載ったりしている。事前にこんなふうに告知をするのは、カレーキャラバンがスタートしてから、初めてのことだ。まちかどでスルーされるのもつらいが、人がたくさん押し寄せるのもなかなか大変だ。

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宿で加藤研の学生たちと合流して、みんなで「とさのひるね」に行って食事。大きなテーブルに大皿がたくさん並ぶだけで、すでに満たされた気持ちになる。(※加藤研の「土佐山田キャンプ」については、別のサイトで報告する予定。)

明日は、「バリュー かがみの」の駐車場でカレーをつくる。

 

※そして、これまでにはなかったこと。カレーキャラバンのことが、新聞に掲載されていた。

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◎2015年8月21日(金)高知新聞

Day 2: ただいま!仏生山カレー

2015年8月20日(木)

朝は四角いトップライトの光で目覚めて、素敵すぎるモーニングサービスに満足したので、もうカレーづくりはやめて、温泉に入って肉うどんとかき氷を食べてのんびりと午後を過ごそうか…と誰もが思っていた(ように見えた)。10:30過ぎに仏生山温泉に着くと、すでに、やぼらってぃ(加藤研の学生)が到着していた。

ここでカレーをつくったのは、ちょうど1年前の8月20日だった。偶然は、うれしい。荷物を降ろしてテントを張ってから、買い物に出かけた。たまねぎ、ゴーヤ、ナス、トマトなど、地元で獲れた野菜をたくさん買って帰り、けっきょく、カレーをつくりはじめたのは13:00過ぎだった。雨の予報だったのに、途中、ほんの少しだけぱらつく程度で、青空と太陽の下で鍋を炊いた。

https://instagram.com/p/6l54v0JZVW/

https://instagram.com/p/6mIcFOpZUf/

2度目なので、ぼくたちなりに使い勝手がわかっていて、とてもやりやすかった。何より、この1年間で20回以上、まちなかでカレーをつくったおかげで、(味はともかく)段取りする術は身についた。設営と撤収だけは、確実に上手くなったと思う。

そして17:00ごろには、「ただいま!仏生山カレー」ができた。聞いたところによると、カレーのにおいが、温泉のほうまで漂っていたようで(ここの湯どのは、空を眺められるようになっているので、遮られることなく、スパイスの香りは届いていたはず)、少しずつ人が集まってきた。仏生山温泉にかぎらず、どこでカレーをつくっていても、この感じは面白い。みんな、「え、どこにいたの?」と思うくらい、いいタイミングで鍋のそばにやって来るのだ。

温泉とカレーは、やはり相性がいい。辛いのを食べて、汗をかいてから温泉に入るのもいいし、ぬる湯に浸かってお腹がすいたところでカレーを食べるのもいい。もちろん、行ったり来たりすることもできる。

https://instagram.com/p/6mSc-4JZeW/

提灯ライトを点けて、みんなにカレーを配る。駐車場が、広場に変わる。ここには「長居させる」空気が流れているのだ。それが、とても心地いいので、再訪する人が増える。ぼくたちも、(勝手に)「ただいま!」という感じで出かけて行って、(きっと)「おかえり」と迎えてもらえるような気になっている。

そして、さりげなく人を想う。ちょっと、縁台を移動する。ビールケースに角材を渡してベンチにする(でも、ちゃんと紙を巻いてお尻が汚れたりトゲが刺さったりしないようにする)。カラーチョークを使ってもいいよ…と言う。すべて、その時どきの雰囲気に合わせながら、ゆるやかに場所をつくってゆく。だから、みんな安心して、ごく自然に腰を降ろして、カレーを食べる。子どもたちは、アスファルトに虹を描く。

https://instagram.com/p/6mapEwJZYe/

うれしい再会がいくつもあった。岡さんご夫妻、ちびっこたちはもちろんだが、わたなべさんにも、長谷部さんにも会うことができた。去年もぼくたちのカレーを食べた…という人もいた(去年は食べ損なったので、今年は早く来たという人も)。あっという間に、カレーがなくなった。

温泉で汗を流してひと息。きょうは、「Kinco」というホステル(& カフェ)に逗留。じつは、これも岡さんの手によるもので、今回は(結果として)岡さんの作品を巡る旅になった。それも、たんに雑誌の図版を眺めるように接するのではなく、店主とことばを交わしたり、実際に泊まってみたり。どれも個性的だが、すべて、人と人との接点が生まれるような(生まれそうな)設えになっている。ダイニングテーブルではなく、「ちゃぶ台」の感じを復活させようとしているのかもしれない。ふと、そう思った。

 

 【おまけ:定点カメラで見るカレーキャラバン(仏生山編2)】

 

 【おまけ:定点カメラで見るカレーキャラバン(仏生山編2)カレー食べる】

Day 1: はじまり。

2015年8月19日(水)

「関西ロード2」のはじまり。ドタバタと支度をして、朝5:30に木村さんたちと待ち合わせ。荷物をたくさん積み込んで、出発した。目指すは、仏生山温泉(香川県高松市)。およそ680kmのドライブだ。ふつうだったら、東京から高松までのドライブは敬遠しそうだが、すでに去年も走っているせいか、あまり気にならない。まぁ、交代しながら運転すれば楽しい道のりだという感覚だ。ここ数年のカレーキャラバンの活動で、ぼくたちは、長距離ドライブを厭わない身体になってしまったのだ。

https://instagram.com/p/6isDEdJZUg/

道中、ぼくたちが移動するときの「ゆるさ」について話をした。いつも、あまり時計を気にしない。サービスエリアに行くと、ゆっくり食事をしたり、おみやげを見たり、写真を撮ったり、平気でゆるゆると過ごしてしまう。時間の使い方にもっと厳しくなれば、もう少し早く目的地に着くはずだ。

ということで、今回は、パーキングエリア/サービスエリアで休憩するときは、最長30分まで。何かを食べるなら、時間がかからないように手軽なもの(たとえば「串にささったもの」など)にかぎる…という申し合わせをした。ルールをつくって、自らの行動を律するのだ。とくに、今回は、きみこさんが飛行機で高松に向かうことになっていたので、のんびりしすぎるのはよくない。厳格に決めていたはずなのに、2度目(3度目?)の休憩のときには、あっさりとルールが破られ、みんなで座ってごはんを食べた。

けっきょく、仏生山温泉に到着したのは15:20ごろだった。さっそく、岡さんと再会(3月に京都のイベントで会う機会があったが、高松で会うのは1年ぶり)。ちょっと腹ごしらえをして、そのあとで、岡さんの案内で仏生山温泉の界隈を散歩した。「へちま文庫」と「TOYTOYTOY」へ。いずれも、ウェブでようすは見ていたが、実際に行くのは初めて。この1年間で、「まちぐるみ温泉」は、確実に成長していたのだ。急がず、でものんびりしすぎない。これからも、絶妙なペースで仏生山温泉の界隈は変わってゆくのだろうか。来るたびに少しずつちがう…ということなら、また来るしかない。そうやって、岡さんは、にやにやとしながら、ぼくたちを誘っているのだ(きっと)。

https://instagram.com/p/6kTVgUJZVN/

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そして、きょうの逗留地は「仏生山まちぐるみ旅館 縁側の客室」。幸運にも予約が取れた。とても素敵な空間だ。いま、23:00ごろ。長〜いテーブルで、この文章を書いている。すやすやと寝ている人、メールをチェックしている人、仕事をしている人。みんな一緒だけど、好き好きに過ごしている。ばらばらだけど、つながっている。だから、居心地がいい。

明日は、1年ぶりに仏生山温泉でカレーをつくる。