2015年4月11日(土)
もう、ずいぶん前に出会っていた。そのことに気づくのに、20年以上かかった。
36回目(番外編を除く)のカレーキャラバンは、上井草(東京都杉並区)へ。「genro & cafe」の軒先をお借りして、カレーをつくることになった。株立(かぶだち)の緑に囲まれた、とても素敵な場所だ。カフェの隣には、ちいさな文具店がある。オーナーの千葉皓史さん(まちづくり上井草 代表)とは、昨年の3月、ねりままちづくりセンターが主催するイベントでご一緒した。株立のあるまち並みや、丸い屋根のカフェは、そのときにスライドで紹介してもらったのだが、行くのは初めてだ。雨のおかげで、緑が引き立つ。
文具店をのぞくと、スタンプがたくさん並んでいた。アクリルの台がついた、あのスタンプだ。大きな文具店でもよく見かけるので、きっと、どこかで目にしたことがあるはずだ。シールやポストカードなどもある。ぼくも、スタンプをいくつか持っている。(まるでじぶんだけの)落款印のような気分で、手紙やポストカードに絵を添えて送ることができる。季節を感じさせる図柄は、どれもあたたかい。
ぼくは、「あぁ、あれをここでも扱っているのか」と思ったのだが、しみじみとパッケージを見たら「GENRO」と記されている。「ここでも扱っている」のではなく、「ここでつくられている」のだった。あのスタンプは、千葉さんの手によるものだったことを知って、本当に驚いた。20年以上も前に、ぼくは、スタンプを介して千葉さんと出会っていた。いままで、きちんとパッケージを見ていなかったことを反省した。つまり、(少し大げさに言えば)ぼくは「聖地」に来ていたのだ。あのスタンプに、少しでもいとおしさを感じる人は、「聖地」を目指して出かけたほうがいい。「作り手」の顔や佇まいとモノとがむすばれると、とたんに、いままでとちがった風景が広がる。これから、「GENRO」のスタンプを手にするたびに、ぼくは、株立の緑とカフェとカレーキャラバンのことを思い出すだろう。雨が上がって、ときおり陽が差した春の一日が目に浮かぶにちがいない。
おそらく「GENRO」のスタンプは、3つ4つは持っているはずだ。カレーをつくった翌朝、じぶんの部屋が整理整頓されていないことを悔やみながら、ごそごそと机の引き出しをあさった。よかった、ひとつ見つかった。
発見のよろこびを象徴するかのように、まず出てきたのは、四つ葉のクローバーのスタンプだった。できすぎた話だ。いつ、どこで買ったのかは思い出せない。残りのスタンプもさがして、きちんと箱に入れておこう。そして、あらたにスタンプを追加するときは、大きな文具店ではなく、のんびりと上井草まで出かけることにしよう。カフェでコーヒーを飲みながら、誰かに手紙を書き、買ったばかりのスタンプを押すのだ。