クローブ犬は考える

The style is myself.

in KENPOKU 03: 丘あんこうカレー

2016年10月29日(土)|旧富士ケ丘小学校(茨城県北茨城市)

KENPOKU ART 2016の会期中に、6つの市町をめぐることになっている。常陸多賀、大子につづく3か所目は北茨城へ。朝から、きれいに晴れた。片道180kmほどのドライブなので、運転しながら、アートプロジェクトについてあれこれと考える。そもそも、カレーキャラバンの活動もアートプロジェクトから生まれたのだ。
近年、全国各地でアートプロジェクトがおこなわれるようになった。規模や内容はざまざまだが、運営する際の組織づくりはもちろんのこと、ウェブをはじめとする媒体のあり方にいたるまで、アートプロジェクトを実践するための方法や態度を模索する試みもたくさんある。

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 そんななか、カレーキャラバンは、従来の「ひな形」には収まらないように、ささやかな抵抗を試みているのかもしれない。アーティストではないし、ボランティアスタッフでもない。ケータリングの業者でもない。ことなる立場や責任を「踏み越える」ことにこそ、関心があるのだ。いま、KENPOKU ART 2016では「イベント」というラベルのもとで活動しているが、おそらく、ぼくたちが志向するのは「ハプニング」と呼ぶべきものだ。予定調和的に進行する「イベント」ではなく、(ぼくたちの活動の)〈場面(シーン)〉を切り替える役割を果たすのが、「ハプニング」である。

好天にめぐまれたこともあってか、作品の鑑賞に訪れるクルマが頻繁に出入りしていた。とはいえ、界隈の人が鍋のそばを通りがかるというような場所ではないため、カレーづくりについては圧倒的に手が足りなかった。そんなとき、ふだんは「茨城県」と書かれた名刺を持って仕事をしているふたりが、事もなげに立場を「踏み越え」て、ぼくたちに手を貸してくれた。タマネギを刻んだり、あん肝をつぶしたりしている姿を見ていると、なんだか力が湧いてきた。SNSを介してぼくたちの活動を知り、手伝いに来てくれた人もいた。旧富士ケ丘小学校を担当しているスタッフのみなさんも、たくさん手伝ってくれた。さらに、ロフトワークの「円卓チーム」も。ぼくたちは、まさに「ハプニング」の連なりのなかにいたのだ。

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じつは、ことなる立場や責任を「踏み越える」などという大げさな話ではないのかもしれない。きっと、ぼくたちの頼りない手つきを見れば、誰もが手を貸そうという気になるだけのことだ。だが、さまざまなかかわりのなかで、その日かぎりのカレーづくりが実現する。だから、いつでもその現場に立ち会うことができるのは、ぼくたちの特権なのかもしれない。

それにしても、北茨城の風は冷たかった。10月も終わろうとしているのだから、あたりまえのことか。たびたび県北に通いながら、秋から冬へ、確実に時間が流れていることを実感している。🍛
 
◉ビデオ|撮影・編集 Lisa Yabora